ベテラン弁護士
新人弁護士に対して、ベテラン弁護士は、かならず指導する。 「どんな事件であっても、依頼者のために最善を尽くすべきだ」 「負ける事件であっても、依頼者のために最善を尽くさないといけない」 たしかに、それ自体は、まったくの真実であり、正しいことである。 ただし、注意しないといけないのは、「それだけが正しいのではない」ということである。 ベテラン弁護士が、新人弁護士に対して、指導しない真実もある。 それは、 「負けるとわかっている事件を受けてはいけない」 ということだ。 これは、とても大事なことである。ある意味では、経営弁護士としての資質は 「負ける事件なのか、勝てる事件なのか」 をみきわめる、という一点に尽きるといっても、過言ではない。 弁護士がどんなにがんばったとしても、事件の筋としては、負けるしかないという事件もある。 また、逆に、どんな事件でも、弁護士ががんばっただけで勝つようになるとすれば、それは不道徳というものであろう。 たとえ、最初から負けるとわかっている事件であっても、実際に負けてみると、徒労感があり、依頼者は、報酬を払わないだけならまだしも、弁護士に責任をかぶせようとすることすら考えられる。 その意味では、「負ける事件ならば、やらない」ということは、とても大事だ。 もっとも、「負ける事件なのか、勝てる事件なのか」という視点は、新人弁護士には無用な視点だ。 なぜなら、新人弁護士は、負ける事件だろうが、勝てる事件だろうが、来た事件は、すべてやらなければならないからである。一生懸命に。 新人ならば、それでよい。 ただ、経営弁護士になったあとにまで 「負ける事件か勝てる事件か、そんなことは一切考えずに、ただ、力戦奮闘するべし」 と考えていれば、それは自分の事務所に害をおよぼす。- 次のページへ:取引履歴を請求しよう
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